めぐる木島平。暮らしも旅もぐるっと。
INTERVIEW村で生きる

川原清久さん/金持ちにはなれないけど、木工の仕事が自分の生きがいだ

この記事は、2018年に書いた内容です。

「毎日楽しくてしょうがない」
笑顔でそう話すのは、ろくろ細工をつくる川原工芸の川原清久さん。
ろくろ細工とは、木工用の“ろくろ”という機械を使って木を削ったりくり抜いたりして作る木工品のこと。川原工芸では、木の切り出しから、乾燥や仕上げの塗装までも自らの工房で行っている。材はすべて国産、それも、ほとんどが信州産を使っている。どれも温かみを感じるものばかりで、持った瞬間、手になじむ感じに、手づくりのこだわりが詰まっている。

木工作業をする川原さん

職人としてのこだわり

「立派な箱に入れて売るより、誰かが使うものを作るのが職人」という川原さん。百貨店のショーウインドウに並べば、値段は3倍にもなる。それよりも実際に使いやすく手に取って選んでもらえる身近なものを作りたい、そんな思いから、直販にもこだわる。木島平村内にある道の駅FARMUS(ファームス)木島平でも、棚に置いてみせるではなく、平置きにして販売している。その理由は、「実際に手に取って選んでもらいたいから」実際、通りかかった客が、売り場で見かけてその質の高さに驚き足をとめていくこともしばしばである。

もともと、南木曽の出身。中学校を卒業して16歳から、父に習って始めた。
使う道具は、鉄の丸棒を加工して自ら研いで作る。工房には、小さな鍛冶場があり、そこで道具の調整も行う。始めた頃、慣れない内は、その道具を日に2度折ってしまい、怒って出ていった父が、翌日には黙って作っておいてくれていた、というエピソードも話してくれた。

木工に使う道具を作る川原さん

ろくろ細工―木の伐採から製作、販売までを行う職人

“作家”ではなく“職人”を目指しているという川原さん。「7~8割の仕事で10割に見せるのがプロ。アマチュアは、(自身のこだわりゆえに)儲からないものも作る」という言葉には思わずうなずいた。
どの話も、その対象にいつも「使う人」がみえる。木という素材は、扱いにとても気をつかう。挽いているうちに、中に穴があいていたということもしょっちゅう。「出来あがりを一番に見られるのは作者である自分」と、その醍醐味を嬉しそうに教えてくれた。木ならではの楽しみもある。ひびや木目も、それを木地としてみせるのは正に職人技。

「若い人のところに行くのも好き」といい、若い世代の感性も取り入れ、積極的に交流している。そうして仕入れた新しい情報が、どんどん新しい作品のアイディアに繋がっていく。しかし、新しいものに挑戦する一方で、お盆や菓子鉢など昔から親しまれている形も大切にしている。例えば、お盆ひとつでも、持った時に落としにくいよう、手にひっかかりがあるよう、縁の部分に細かな工夫が施されている。機械でまっすぐ切ってしまうものが多く流通するなか、川原工芸の作品は、「使いやすいもの、ずっと続くものを目指している」と言い、どれも使う人のことを考えて作られたものばかり。
昔からある菓子鉢やお盆から、たまご型がかわいい「森のたまご」や、子どもにも親しみやすい「こま」など、創作モノも一緒に並んでいる。

「金持ちにはなれないけど、この木工の仕事が自分の生きがいだ」

平日は会社員として勤め、休日を利用して作品づくりやクラフトフェアなどでの出店を行う。塗装を担当する母と2人、お互い意見を出し合い、分業しながらやっている。

これまで、色々な種類の仕事をしてきたという川原さんの話には、どれも人生訓のような含蓄がある。「職人は今、みんな苦労している」と言いながらも、聞かれるのはポジティブな言葉ばかり。
どの仕事にも興味を持って真剣に取り組む姿勢が、仕事でも趣味においても、「楽しくてしょうがない」と思えるゆえんに思える。

「金持ちにはなれないけど、この木工の仕事が自分の生きがいだ」と川原さんは言う。
伝統工芸をつくる現場に身を置きながら、常に向上心を絶やさない川原さんの作品がどう深化していくか、これからも楽しみである。

【川原工芸 のろくろ細工を買うなら】

川原さんが作った作品

道の駅ファームス木島平
住所 :〒389-2302 長野県下高井郡木島平村大字上木島38番地1(地図はこちら
TEL :0269-62-2201
営業時間:9:00~17:00 (12月~2月9:30~16:00)
定休日:毎週月曜日
URL:http://www.farmus.jp/

食彩市場たる川
住所 :〒389-2303 長野県下高井郡木島平村上木島5691番地1(地図はこちら
TEL :0269-63-3620
営業時間:4月〜11月 8:30〜18:00(11月は17:30まで)、12月〜3月 9:30〜17:00
定休日:1〜3月の毎週水曜日、年末年始(12月31日〜1月4日)

売店たかやしろ(木島平村観光交流センター内)
住所 :〒389-2303 長野県下高井郡木島平村上木島2548‐1(地図はこちら
TEL :0269-82-4710
営業時間:売店たかやしろ 9:00〜17:00
定休日:年中無休(1月1日のみ休業)

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川原 清久(かわはら きよひさ)さん
1962年生まれ
木工職人
「川原工芸」で母と共にろくろ細工の製作・販売
TEL:0269-82-4037
Instagram:川原工芸 ゼペット | 木製ろくろ細工工房(@rokuroya_) • Instagram写真と動画

現在は、2022年にお仕事を退職され、工芸一本で生活をしている。イベントやクラフトフェアにも参加し、対面販売でお客様からアイデアを頂くことも多いという。「要望があれば、丸いものならなんでも挑戦したい。いつでも作れるように、たくさんの木材を準備してきたから、これからはゆっくりあせらず色んな作品に挑戦していきたいな。たくさんの人に手に取ってもらって、使ってもらえたら嬉しい。」工芸にかける時間が増え、やりたいことも具体的になってきたという。色んな方とコラボし作品を作ったり、木島平村にある木材を活用していきたいと考えている。幼い頃からものづくりが好きだった川原さん。今後も生涯現役で多くの作品を作りだしていくのであろう。