西澤仁美さん/面白そうなことはとりあえずやってみる
NPO法人太陽と水と緑のプロジェクトの活動を通して出会った木島平村に、地域おこし協力隊として2017年に移住した西澤さん。3年間の任期後は、集落支援員として役場で働くかたわら、無農薬でのお米作りや田植えイベント、太陽光パネルの制作イベントなどを主催し未来に繋げる活動を行う。そんな西澤さんに今回はお話を伺いました。

NPO法人の活動を始めた理由
西澤さんが理事をつとめるNPO法人太陽と水と緑のプロジェクトはインドのスラムに住む子どもたちや、貧しい農村への自立を支援する活動を行ってきた。元々は高校時代の恩師が立ち上げたこのプロジェクトに「NPO法人として一緒にやらないか」と誘われたことがきっかけで、現在は理事として共同で活動を行っている。前職を辞めたタイミングで恩師に声をかけられ、1カ月間インドに行ってみることに。
「大学時代にも先生とのご縁で、1週間インドに行ったことがありました。せっかくの活動がなくなってしまうのはもったいないと思い、自分が必要とされているなら役に立ちたいという気持ちもあり行くことにしました。実際1か月インドで一緒に活動をして、NPO法人を共同設立することを決めました。」
興味があることへのフットワークが軽く、好奇心旺盛な西澤さん。学生時代から誘われたら断ることは考えずとりあえずやってみるタイプだったというが、この行動力は西澤さんの強みだろう。

NPO法人の活動はインドでの支援を継続しつつ、日本で何を活動の軸にするのかを模索していたなかで、もともと西澤さんが興味のあったオーガニックや無農薬の食材に挑戦してみることに。「人に伝えるにはまずは自分たちがやってみる」という恩師のポリシーのもと、実際に無農薬での野菜作りをスタートさせた。たまたま恩師の知り合いが飯山市におり、木島平村のお隣、飯山市が活動の拠点となった。もともと埼玉県出身の西澤さんは、埼玉県と飯山市での2拠点生活を送っていた。その後、畑で野菜を作るだけでなく、不耕起栽培でお米を作ることになり、紹介してもらったのが木島平村の農家さん。これが木島平村との出会いだった。

地域と関わるために地域おこし協力隊に挑戦
「飯山で畑をしていたときから木島平村の方を紹介してもらっていたので木島平村の方との交流はありました。木島平村はいいところだからもっと盛り上げて欲しいと言われていました。自分たちが住んでいる場所を好きな人が多い素敵な村なのだろうなあと思いお話を聞いていました。」
木島平村で2015年に不耕起栽培でのお米作りを始め、翌年には田植えイベントを開催した。
「活動をしている中で、外から関わるだけでは地域の中が見えないなあと思い始めました。地域おこし協力隊の方とも交流があり、そのような関わり方もあるのだと知り、ちょうど募集を見つけたタイミングで応募してみました。」
2017年の2月から地域おこし協力隊に着任。そこから3年間協力隊を務める。観光スポットだけでなく、地域そのものの魅力を観光資源としてPRする活動などを行っていた。とにかく村の中に出て、地域の方と関わることを意識したという。中町展示館や高齢の方の憩いの場である夢広場など人が集まる場所へ足を運び、色んな方のお話を聞くことに時間を注力した。人の話を聞くことがもともと好きだったこともあるが、西澤さんの醸し出す雰囲気にみなさん自然と会話が弾むのであろう。そこで繋がりが広がり、お料理上手なお母さんに手伝ってもらい、 自然食のイベントを開催したり、道の駅など村内施設を使用したイベントを行うなど地域の方と関わる中で得た人脈は西澤さんの強みだ。2019年に退任後、集落支援員として役場で働き現在に至る。
「3年間の任期中に得た人脈や経験を地域に活かしたいという気持ちがあり、役場と相談して集落支援員になりました。いまは役場で移住定住と空き家 の仕事をするかたわら、NPO法人の活動としてお米作りやイベントを続けています。」


ここでの生活が好きです
地域おこし協力隊の任期中に、ご縁があり木島平村の方と結婚。木島平村の自然と人がますます好きになっている。
「木島平のお米を初めて食べた時は、お米をおかずにお米を食べられると思うほど美味しくて衝撃を受けました。農村部に住んだのは初めてなので、他の地域と比較はできないですが、人は温かいし、人との距離感も心地よく感じます。生産現場が身近なので、自分が食べるものがどうできているのか知ることができるのも面白いです。仕事がきっかけで移住しましたが、今は第二の故郷みたいに感じています。」
移住前からNPO法人の活動を行っていたことで知り合いがいたこと、東京や埼玉へもすぐに帰ることができる環境であることは、移住の後押しになった。地域おこし協力隊という肩書があったことで地域にとけこみやすく、経済面でも安心感があったという。
現在は起業に向けて日々勉強をしている。自分の得意分野を伸ばす働き方を模索しながら準備を進めており、集落支援員の仕事は今年度で一区切りの予定だ。今後は木島平村で生活しながら人に喜んでもらえることを自分ですすめていく。

「インドのスラムや農村部で暮らす方々に会って、ものが少ない中でも屈託なく笑い楽しそうに暮らす心の豊かさを知り、〝ない〟ことの良さもあるのだと感じることができました。木島平村もなにもないと言う人がいるけど、村に住んでいる方が 、この地域が好き、ここでの生活が好きという方が多いことに私は魅力を感じます。心の底ではみんなここが好きなんだなと感じます。ここでの生活が私は好きです。」
穏やかな笑顔でお話してくださった西澤さん。様々な経験をされる中で培った強みを活かし今後どんな活動をされるのか楽しみだ。興味があることはとりあえずやってみるという行動力と好奇心でこれからも自分で道を切り拓いていくのだろう。
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西澤仁美(にしざわひとみ)さん
埼玉県出身
NPO法人太陽と水と緑のプロジェクト 理事
2017年地域おこし協力隊として移住