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INTERVIEW村で生きる

湯本竜也さん/冬は人間相手で、オフは農産物相手に日が暮れる メリハリがあっていい

この記事は、2017年に書いた内容です。

湯本竜也さん

春の雪が残る、北信州木島平の霊峰高社山を見上げる高台で一人、畑での畝作りに勤しむ男がいた。

3月末までは、高社山の裾野に広がる木島平スキー場でペンション兼レストラン「ビストロ原宿」を営んでいる。自家製のコメと野菜がレストランの最大の売りだ。

ペンションビストロ原宿

シーズンオフになると水稲、キュウリ、ズッキーニ等、農の村木島平を代表する野菜を栽培する。とりわけアスパラガスについては、5000㎡を栽培する。

彼の名前は湯本竜也氏(40)。
湯本竜也氏は、この山紫水明風光明媚な村に、1976年に生まれ幼少の頃からこの雄大な大地をクロスカントリースキーで駆け巡ってきた。高校卒業後は近畿大学に進み、3年時にはインカレ総合優勝を果たした。卒業後2003年からは両親の営むペンションを手伝う傍ら見よう見まねで農作業を始めた。元来凝り性の性格もあったことと、クロスカントリースキーで養われた逆境にくじけない精神をもって、次第に「農業」に没頭しはじめた。

“クロカンって人生そのものだなあって引退してから久しいですけど最近特に思います。快晴の日はどこまでも走れる気がしますけど、猛吹雪の日のレースではスタートしても視界がなかったり、ワックスが効かなかったり、あらゆるトラブルが襲ってくるんです。ルール的にも誰の手を借りずに1人でゴールラインを切らなければならないんです。正直リタイヤするのは簡単なんですけど、選手はみんな最後まで走りきるんです。”

日本一うまいアスパラを食べてもらいたい

2013年頃から宿業と農業の両輪で生きていくことに自信が芽生えはじめ、村の新規就農者制度に応募し、認定された。農作業も一人で考えながらここまでやってきた。
木島平村・飯山市は国内有数のアスパラ産地。これまで地元JAがその牽引役を担ってきた。
「木島平村産アスパラガスは、品質、見栄えとも日本一だと思います。作業がきついとはあまり思わないが、思ったより大変なのが出荷のための規格合わせだという。姉妹都市東京調布市にある村のアンテナショップ新鮮屋でも、この時期一番の売れ筋はアスパラガス。連日入荷を待つなじみ客が調布銀座商栄会の通りに集まる。

木島平産のアスパラガス

面白い取り組みにかかわりたい

産業ネットワーク協議会がすすめる「観光地域づくり」は、観光客が農家や地域の人々と触れ合うことでリピート率を高め、地域全体の経済が活性化する戦略を掲げる。そんな彼に木島平への思いを聞いてみた。

“今みんなが取り組んでいる産業ネットワークの活動っていいなあと思います。酒米金紋錦のイベントも花見の時期とか季節の節目節目でやるのもおもしろいですね。それから…”

木島平村をもっと宣伝したいという彼の口からは日頃考えているアイディアがポンポン飛び出す。

“地元の人と観光客が触れ合うってライブな観光みたいですね。僕も最近、高社山を全体を使ったトレイルコースを考えたりしてるんです。農産物だって生産者が直接販売した方がお客さんも喜ぶし…。今の生活に充分満足してるかと言えば、12月から3月までグッ~と集中して働いて、春からは一気に頭を切り替えてまたグッ~とやる感じ。冬は人間相手で、オフは農産物相手に日が暮れる。メリハリがあっていい。”

“このままでいいと思えば今はいいですけど、10年後もこの状態が続くとは思ってないです。現状維持は今後下ることを意味するし、やはり守りでなく攻める姿勢が大事だなあと思ってます。」と少年時代を過ごした小学校の校舎を見下ろす畑で未来への生き方を語った。

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湯本竜也さん(ゆもとりゅうや)さん
1976年の生まれ
スノーリゾートロマンスの神様でペンション兼レストラン「ペンション ビストロ原宿」を経営。
オフシーズンは米、キュウリ、ズッキーニ等、農の村木島平を代表する野菜を栽培。
公式サイトURL: https://www.bistro-harajyuku.net/

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