めぐる木島平。暮らしも旅もぐるっと。

木島平村の馬曲地区には古民家の柱や梁などの主要な構造材をそのまま利用し、囲炉裏や土間などを再現した、失われつつある農民の生活様式を今に伝える施設 郷の家 があります。
今回は郷の家の管理人を努めながら、郷の家を拠点に季節の食材を使用した郷土料理を振る舞い、語り部として木島平村の伝統文化を伝え続けている岩井真里子さんにお話を伺いました。

※地域に伝わる伝説や昔話を伝える人

郷の家で郷土料理や語り部をはじめた理由

岩井さんは木島平村生まれ木島平村育ち。結婚を機に転勤族だった旦那さんのお仕事の都合で村を離れ、群馬県、東京都、新潟県、大阪府、宮崎県、フィリピンなど様々な土地を渡り歩き、退職を機に生まれ故郷の木島平村へ戻ってきた。
村に戻った後、長野県シニア大学北信学部に入学して地域づくりについて学ぶ中、恩師に学んだことを地域の人に還元していきなさいと教わり、お客として郷の家に訪れたことがきっかけで木島平村の伝統を守っていきたいと思うようになり郷土料理や語り部をはじめたという。

お客さんの「美味しかったよ」が一番の励み

郷の家では毎年11月に「昭和レトロ食彩紀行」という木島平村の田舎料理を提供して、もてなすイベントがある。「沢山の人が来てくれて、“本当に美味しかったよ”って言ってくれる。東京から毎年来てくださる方もいて楽しみにしてくれて、帰る時に“来年はいつかな?”って聞いてくれて。」
大変なことはないですか?という問いに「友達や仲間がいるからね。みんなが集まってきてくれるから出来ると思っている。大変だと思ったことは一度もない。だって楽しいから。」
彼女の人柄が織りなす温かな雰囲気や素朴で懐かしい手料理が、人々の心を掴みファンや仲間を呼ぶのであろう。

語りは勉強しないと語れないもの

岩井さんは語り部としても精力的に活動していて、今では郷の家や木島平村以外でも地域の子供たちに木島平村や近隣地域に伝わる歴史や民話を語り伝える活動をしている。
「子供達の前に立つからには勉強して正しい標準語で話しをしたいと思っているので、もっと勉強しないといけないと思っています。語りは勉強しないと語れないものだから。子供達がすごく楽しみにしていて待っていてくれるから、こっちも話しをするのが楽しみです。」
現在も自分で勉強を続ける傍ら、先生につき朗読も学んでいるという。伝統文化を正しい言葉で若い世代に伝えていきたいという彼女の誠実な姿勢から、郷土や文化に対する深い愛情を感じた。

外を見てきたからこそ分かる木島平村の魅力

「木島平村の良いところは自然が豊か、水が美味しい、人が優しい。他の地域にはそれぞれの良さがあったけれど生まれたところは特別ですね。外を見てきた自分だからこそ木島平村の良いところが分かる。もっと大事にしてほしいと思うけど、村で育ってずっと住んでいる人にとってはそれが当たり前だからね。村の良さを分かってないと私は思ってる。もっと守ってほしいと思ってる。でも、それだけ幸せってことですよね。」
今後の目標を尋ねると「郷の家を語り部の里としてもう一度盛り上げていきたい」と穏やかな眼差しで語ってくれた。現在、村の語り部は岩井さんと彼女の師匠の2人。多くの語り部やお客さんに郷の家に訪れてもらい、郷の家をもっと盛り上げていきたいと話す。

様々な場所で生活し、それぞれの土地の良さを知っている彼女だからこそ分かる木島平村やその伝統文化の魅力。その素晴らしさを未来を担う若い世代に正しく伝えていくために、岩井さんは今日も学び伝え続けている。

囲炉裏の匂い。カマドで炊いたご飯。郷土料理。昔話。そして人の温もり…。世の中は沢山の情報が溢れ、知恵や経験、歴史や文化を「語る」こと「語り継ぐ」ことの大切さが忘れさられようとしている。
忘れかけていた心の故郷を感じに、郷の家を訪れてみてはいかがだろうか。

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岩井 真里子(いわい まりこ)さん
1951年9月生まれ
木島平村(医王山 照明寺)出身
結婚を機に木島平村を離れて群馬県、東京都、新潟県、大阪府、宮崎県、フィリピンなどを渡り歩き、旦那さんの退職を機に木島平村へ戻る
趣味:語り、外で遊ぶこと、登山
好きな郷土料理:芋のにっころがし
好きな民話:上堰(うわせぎ)物語

郷の家:https://kijimadaira.org/article/detail/activity/satonoie/