MENU

木島平人11│祢津和利さん

午前5時 夜明け前の大会会場のチームテント内ではスキー板の手入れが始まった。この後午前9時のスタートに向けて、選手ひとり一人の特性に合わせで昨晩塗布したワックス剥がしと磨きを入念に行う。夜明け前の静寂の中、スクレーパーでワックスを削り取る乾いた音だけが同じリズムで刻まれる。

「地元で開催する大会になるとこの作業の前に圧雪車でコースを踏み固め、スタートエリア、フィニッシュエリアの整備があったり、かなりきついですね。前の晩、降雪があれば更に大変です。」長野県内でもとりわけ豪雪地帯である飯山市、野沢温泉村、山ノ内町、白馬村、小谷村、木島平村等では、子供たちのクロスカントリー競技が盛んだ。その中でも木島平ジュニアクロスカントリースキーチームは小学生から中学生までの40人余りの大所帯。祢津和利はそれを支える木島平スキークラブのクロスカントリー部長であり、2012年から長野県スキー連盟のジュニアヘッドコーチを務め、これまで全国中学校大会やインターハイ(高校選手権)、インカレ(大学選手権)でトップ3に入る選手を多く輩出させてきた。
「スキーコーチ業は過酷です。基本みんな生業を持ちながらほぼボランティアですから。辛いこともいっぱいあります。でも続けてられているのは、クロスカントリー競技自体が、辛く苦しい競技だから。苦労の末に選手たちの結果で救われます…それが醍醐味というか…。」

祢津和利は昭和51年に地元の酒屋小売業 西村屋の長男として生まれ、日本体育大学まで選手生活を送り、卒業後跡継ぎとして家に戻った。「木島平村が好きでしたし、家の事情もあったり。それに大学まで続けた競技生活で得たノウハウを育ててくれた地元に還元し、指導者として日本一のチームを作りたいという思いもありました。」
地元に支えられている…。酒屋業は、かなりの体力仕事であり、他の酒屋店主に比べまだ若いとはいえ、冬場に周辺のホテル、旅館から注文が入り、厨房までビールケースを運ぶのはかなり骨が折れる。「厨房まで運ぶことを西村屋の売りにしてます。商売もそうですけど、スキーも含めて地元に支えられて生きてるんだと実感してます。」

平成28年、祢津は競技運営に必要な資格である全日本スキー連盟(SAJ)の公認技術代表のライセンスを取得した。木島平村では2人目である。「これまで大会運営を牽引いてきた往年の先輩が体もきついし、そろそろ後任としてやってほしいと。」選手を作り続けるのも大変だが、他の地域の選手にベストな大会を提供することも全体の底上げになるとの思いからだった。取得後は、国体や全日本選手権等への出役も多くなり以前にも増して多忙を極める。「不在でチームスタッフには迷惑をかけることが多くなってきましたけど、信頼できるスタッフなので安心してます。」

祢津は、この地域特有の冬のスポーツ文化であるクロスカントリースキー。地域に支えられ躍動する木島平クロスカントリーチーム。その未来について語った。「これまでは、この地域の子供たちは、冬になればクロスカントリースキーをするのが当たり前の時代でしたが、今は選択肢が広がり、みんなが皆それに親しむという時代ではなくなってきています。試合で勝つことは大事ですが、地域の皆さんがもっと気軽にスキーに親しむ環境づくりが必要だと思います。ホームコースである木島平クロスカントリー競技場には年間通じて、一流選手が多く訪れていますし、そのことが木島平=クロスカントリースキーのメッカとなっています。これからも世界で活躍する選手を育てていきたいですし、そのことで地域が元気になればいいと。一方では、一流選手と一般スキーヤーや触れ合ったり、住民の健康増進にも我々はアイデアを出していければと思います。そのためにはこの木島平村が持続していくことが絶対条件です。」

 

========
祢津和利(ねつかずとし)さん
1976年生まれの41歳
木島平スキークラブ クロスカントリーコーチ
酒屋 西村屋商店を営む

西村屋商店 TEL:0269-82-3292(地図はこちら